読書感想・忘備録ブログ

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本9:サクリファイス

あらすじ

 本作の題材はサイクル・ロードレースで、目新しさを感じさせる作品。

 

サイクル・ロードレースは、チームで活動するスポーツ。チームには、有力選手を勝たせるアシスト役がおり、先頭に立って風切り役となったり相手のペースを掻き乱す役割を担う。

 

主人公・白石も、チームのエース・石尾をサポートするアシスト役。陸上選手時代のトラウマを持つ彼は、檜舞台を好まずアシストが適役と信じ込む。

 

本作では、そんな彼が勝ち馬に乗り始め、「自身の勝利」or「チームの勝利」を天秤にかけ苦悩する姿を中心に据え、物語を展開している。

 

感想

 自分にとってなじみのないスポーツを題材にしている点が、何より新鮮で良かった。競技の普及に繋がる、価値のある作品だと思う。

 

下記、気になった点について。

 

脇役の存在感

 脇役のエース・石尾と同期・伊庭の存在感が強く、物語に良いスパイスを与えていた。

 

石尾は、勝ちに対して貪欲で、自分以外のエースは認めないと噂されるほど。そんな彼の本心はなかなか見えず、その薄気味悪さが話に緊張感を引き立てている。

 

伊庭の方も、白石の心を揺さぶる重要な存在。次期エースとも噂される実力者で、勝ちに貪欲。白石と正反対な性格だが、彼と交わる中で少なからず影響を受け、「自分が勝つ」方への気持ちの揺らぎを生む触媒として光っていた。

 

香乃の役割

元々陸上選手を辞めた理由は、香乃の裏切り。同時に、試合に勝つ事に対する想いも消える。そんなトラウマの元凶として登場した彼女。

 

途中白石との再会もあったけど、互いの関係改善や、結末の石尾事件の真相を話す事なく終焉を迎え、少し後味の悪さが残った。

 

結局、主人公の苦悩を揺さぶるための存在だったのかもしれない。

 

評価

題材   :★★★★★

ミステリー:★★★★☆

読後感  :★★★☆☆

 

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