映画5:セブン
あらすじ
いかにも犯罪が起こりそうな荒れた街で、とある猟奇的殺人事件が起こる。現場には肥満男性の遺体が横たわり、そこには暴食という犯人からのメッセージが・・・。
後に7つの大罪「傲慢・強欲・嫉妬・憤怒・暴食・色欲・怠惰」の一つを示している事が分かり、次々と7つの大罪を意図する殺人事件が起こる。
それを追うのは、退職7日前のサマーセットと新米ミルズ刑事。途中犯人のアジトを特定するなど、寸前まで追い詰めるも・・・逮捕出来ず。
結果、二人の刑事は犯人に目を付けられ、残りの殺人事件に巻き込まれていく。
感想
まちがいなく、良作の部類に入る作品。良かった点を下記にまとめる。
デビット・フィンチャー作品の世界観
自分が見た彼の初作品だったが、良い意味での暗さが前面に出ていた。廃退した街の情景、過度なダーティーさが垣間見れる殺人現場、時折映る犯人の描写など、それらの映像が出るたびに緊迫感が生まれる。
鑑賞後も、上記のような場面が何度かフラッシュバックするほど、衝撃の濃い作品だった。これは、ファイト・クラブやベン・ジャミンバトンでも同様の印象を受けたので、彼独特の世界観が影響しているのだろう。
ストーリーの出来の良さ
良かったのは、ただの刑事ものとは違い、複数のエッセンスが混じりあっていた事。
具体的には、7つの大罪をモチーフにしている事と作品を通じて社会風刺を行っている事。
まず7つの大罪をモチーフにする事で、それぞれの殺人事件に意味を持たせ、連続性が出来る。これにより、尺も稼げるし、回を追うごとに刑事側には焦燥感が生まれ、視聴者の興味も掻き立てる。
もう一点は、作品を通じた社会風刺だ。
犯罪が起きても、見てみぬふりをする民衆。自分には関係ないと一線を貼る事で、余計な労力を払う事なく、少なくとも自分の身の回りの不幸を避けようとする。
心のどこかではそれがあるべき姿ではないと分かっているが、何も出来ずただただ世の中を冷めた目で傍観する。そんな民衆の代表として映し出されるのがサマセットだ。
そして、彼ら民衆の代弁者として冷めた世の中に鉄槌を加えようとするのが犯人のジョン・ドゥである。
一方、新米ミルズは血気盛んで、そんな世の中を自分の力で変えようとやる気に満ち溢れた青年。大切な家族を持ち、彼らのためにも一生けん命仕事に励む姿は人としての理想像を想い起こさせる。
そんな彼だが、世の中を叶えるどころか犯人に利用され、悲愴な結末を招いてしまう。
結末は残酷だ。
そしてこういった、善(ミルズ)を殺し悪(犯人のジョン・ドゥ)を活かすのが現代社会。それを皮肉り、こういう人物設定・ストーリーにしているように思われた。