本7:しんがり
◆あらすじ:実在した会社「山一證券」の経営破たんに隠された真実。
本のタイトル「しんがり」とは、いくさに敗れ敗走する部隊の最後尾で敵の進軍を防ぐ役割の事。
その言葉通り、「しんがり」メンバーが山一証券不正問題の真因を巡り権力者に疎まれながらも真実を明らかにしていく。
◆感想:真実を追求して報道するという記者出身作家のジャーナリズムと、巨大企業の不正問題を追及した「しんがり」メンバーの想いが折り合った作品。
小説なので物語のどこまでが本当の話かは知らないが、史実感を感じられる作品だった。下記に、気になった点をいくつか列挙。
・不正の徹底的な追及
闇に葬られがちな上位者の不正を明らかにしている点は、この本の主要テーマの一つだと思う。大蔵省など別組織にも一石を投じている場面は読みごたえがある。
・隠蔽のからくり
山一証券→山一エンタープライズ→ペーパーカンパニーというルートを作り、決算期の異なるペーパーカンパニー間で、飛ばしのキャッチボールを繰り返して不正を隠蔽。
監査が緩ければ、不正はバレないものなのだろうか?こうした抜け道が出来てしまうのは、ルールが不完全か最新の動向に追いついていないかだと感じた。
・不正を起こした理由
一つは、過去の栄光にすがり、法人営業を強化する方向を曲げなかった事だと思う。もう一点は、ある範囲までの危険は以上と捉えないという異常性を、企業が当たり前の事として持ってしまった事だと思う。こういった事態を避けるには、この本で言う「心の清涼感を持つ」必要があると感じた。
◆評価
史実感 :★★★★☆
テーマ :★★★★☆
読後感 :★★★★☆